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新年あけましておめでとうございます。
早いもので開業後8年目を迎え、たまに患者さんから戴き物をするようになりました。
陶製のポケットティッシュ入れや猫の水彩画、黄色の可憐な花びらを咲かせた花のアップ写真や準5段の腕前の書道作品、そして亡くなった子供のアイスホッケー姿を写したテレフォンカードなどなど・・・。
中には認知症の方のものも含まれていて、どれもみな戴いた患者さん本人や家族にとってはそれぞれに深い思い入れのある作品です。
                 
これらの頂き物のなかでも大切なのは待合室の飾り棚に並んでいる花瓶です。(写真)
いずれも手びねりで、いい具合に肩から首がすぼまり胴はやや広がっています。
赤土の透明釉が多く、たまに白の上薬がかかったものがあります。共通の装飾はしのぎの削りです。しのぎ(鎬)とは刀剣で、刃と峰との間に刀身を貫いて走る稜線のこと、ご存知のとおり激しく争うことをしのぎを削るといいますが、そのしのぎです。
戴いた花瓶に丹念に彫られた縦のしのぎはシャープにとがっていて、それでいて緩やかに伸びやかに上下に連なり、その描くカーブが流れ落ちる滝のごとくで本当に見事だと私は感じます。
じつは、こられ等の作品の贈り主は脳梗塞後遺症で右片麻痺のある70代の男性です。
粘土の紐を高く積み上げて作った半乾燥の花瓶を左手で支えて、不自由な右手でゆっくりと時間をかけて何とかしのぎを削ったのでしょう。
後遺症のため細かな技巧を施すことが出来ず、いつも同じような形成と装飾になってしまうのだと思います。
シャープなしのぎ以外は全く質素で、けっして主役の花の美しさを損なわず、花瓶の花瓶たる役目を果たしています。
私も陶芸を習っていますが、どうしてもきっちり仕上げようとしてしまいます。
当初は粘土をろくろでいかに薄く高く引き上げるか、いかに芯をはずさずに正円にするか、いかに薄く削るかなど形成の練習に励んだものです。でも、そのうち技術の壁に突き当たりますし、それに乗じて、少しくらい厚みがあっても手にしたときに肌触りがよく重量感のあるもの、整いすぎたものより変形したもののほうが味わいがあると言い訳がましくも感じるようになりました。
この前、ある本を読んでいて、わたしの陶芸経験とまったく同じような童話があることに驚きました。
昭和26年に発行された小川未明童話集「赤いろうそくと人魚」の中の「殿さまの茶わん」という話です。話の筋はこうです。
街に薄手で軽くて上等な陶器を作ることで有名な陶器師がありました。うわさを聞きつけた殿さまの家臣に頼まれてこの陶器師は、透き通るようにとびきり薄手で軽い茶碗を献上します。
毎食膳に供えられたその茶碗を使った殿様は、熱い汁や茶を飲むたびに手が焼けるようで難渋しますが我慢の毎日。
ある日、殿様は山国の百姓家に泊まるはめになり、出された厚く重たい茶わんで食事をしました。
このとき、茶わんは厚かったので手が焼けるようなことはなく、名もない職人が焼いた粗末でも親切心のこもった茶わんに感激します。
後日、殿さまが街の陶器師を御殿に呼んでこの話を伝えたところ、以後、この陶器師は厚手の茶わんを作る普通の職人になったという話です。
殿さまに献上できるほど私の陶芸の腕が上達しなくて幸いでしたが、シャープなしのぎ以外は質素で、けっして主役の花の美しさを損なわず、花瓶の花瓶たる役目を果たしている戴き物の花瓶は、まさに百姓家で出された厚く重たい茶わんなのではと思いました。
花瓶を届けて頂く患者さんは失語症と感情失禁もあるので、いつも笑顔で「どうも、どうも」を繰り返して診察室に入ってきます。とてもせっかちな性格で、十分な診察も受けずに花瓶だけを私に手渡して、満足げにさっさと迎えの車で帰ってしまうこともあります。
札幌でも有名な窯の門下生に習っているらしく、リハビリを兼ねて毎週、バスで南区の端から街まで出かけるのを何よりの楽しみにしているようです。
この患者さんから戴いた花瓶の数を数えてみると今のところ13個になりました。
こんな質実な贈り物の定期便なら今年も、いつまでも歓迎です。
平成19年1月 札医通信 新春随筆
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