一過性脳虚血発作・心原性脳塞栓症/川沿脳神経外科札幌市の脳神経外科、頭痛、めまい。手足のしびれ、ものわすれ、脳ドック、札幌の川沿脳神経外科クリニック/メール

質問：

昨夜、友人とカラオケに興じていたところ、突然言葉が出ず歌えなくなりました。ほんの２０～３０秒の間のことです。
すぐ、元通りに歌えるようになったのでそのままカラオケを楽しんで帰りました。
今まで深夜にときどき動悸を感じることがありましたが朝には治っているので、特別病院にはかかっていません。

答え：

あなたの昨夜の出来事は一過性脳虚血発作の疑いがあります。

脳の動脈が血栓で一時的にふさがれて言葉が出なくなった可能性です。

血管をふさいだ血栓がすぐに融けて脳の血流が再開すると、症状もまもなく消失します。

しかし、このような一過性脳虚血発作こそ、じつは半身麻痺、失語症など後遺症を残す大きな脳梗塞の前兆で要注意とされているのです。　　　　　

一過性脳虚血発作の原因となる血栓の多くは心臓由来で、その場合とくに心原性脳塞栓症と呼ばれます。長嶋監督や坂上二郎さん、小渕首相など多くの方が同じ病気を発症されたのはご存知の方も多いと思います。

心臓の中に血栓が出来る原因は心筋梗塞や心臓弁膜症があり、最近は心房細動という不整脈がふえています。心房細動は脈拍が不規則であるため心臓の中、特に左心耳というところに血液のよどみができます。

この部位に赤血球がフィブリンという糸状のもので絡め取られて血栓ができ、あるとき心臓の壁からはがれて頚動脈に流れ出し脳の動脈を塞ぐわけです。

心房細動は日常、常に起きている方と発作的に一時的にのみ起きる方があります。

あなたの場合は後者で夜のみ発作的にこの危険な不整脈、心房細動を起こしているのかもしれません。

そして、たまたまカラオケの最中に心臓にできていた血栓が頚動脈に流れ出た可能性があります。

一過性脳虚血発作ですんだのは幸いでした。

とにかく今日、脳神経外科と循環器内科を受診しましょう。

旧い脳梗塞の有無、頭頚部の主要血管の血栓の名残の有無、そして心臓内部の血栓の有無を調べましょう。

負担のないMRIや心臓エコー検査でわかります。血栓を溶かし血栓を予防するにはワルファリンという有効な薬があります。

心房細動自体も薬で脈拍数をコントロールしたり、心臓アブレーションというカテーテル治療で治すことができる場合もあります。

最近、脳梗塞の魔法の薬としてテレビなどで触れられているｔPAとういう注射薬は、この心原性脳塞栓症の急性期（発症後３時間以内）に効く薬です。