不妊で脳の病気を疑うときは、眼の奥にある脳下垂体というホルモンの中枢の病気を疑います。
プロラクチンは脳下垂体から分泌されるからです。プロラクチンは乳汁分泌ホルモンとも言われ、文字通り乳房を発育させ乳汁の分泌を促すホルモンです。そのほか排卵を抑える働きもあります。妊娠した女性が授乳しやすくなり、かつ次の妊娠が抑えられるようにする自然の仕組みです。
しかし、妊娠していないのにプロラクチンが高くなると排卵が抑えられて生理不順となり、不妊の原因になります。
プロラクチンの正常値は15ng/ml以下ですが200ng/ml以上のときは脳下垂体や視床下部の病気を疑います。プロラクチンの値が200mg/ml以下のときは、ある種の精神科の薬、胃薬など薬の副作用によるものを疑います。これらのときは服薬を中止すると間もなくプロラクチンの値も正常化します。
脳下垂体や視床下部の病気で頻度が最も高いのは脳下垂体腺腫です。診断は造影剤を使ったMRIで可能で検査の負担はありません。腫瘍が大きくて近くを走る視神経を圧迫しているときには手術が考慮されます。手術といっても鼻腔から行う手術で見た目は目立たず、入院も2週間程度で済みます。
腫瘍は通常良性ですので一度摘出すると再発の危険性はほとんどありません。もし、腫瘍が小さくて視神経の圧迫がなければ、プロラクチンの分泌を抑える薬物治療がなされます。
使われる薬物はカバサール、パーロデル、ブロモクリプチンなどで、プロラクチンが正常化することにより妊娠が可能になります。また腫瘍の縮小が期待される場合もあります。
ただ、完全に治すことはできないので長期間の服薬継続が必要です。
腫瘍が手術の困難な部位にあるときや、何らかの原因で薬物治療ができないときはガンマナイフによる放射線治療が行われます。利点は治療が一回で済むことですが、欠点としてプロラクチンに対する効果が25~70%程度と確実ではないことがあります。 |