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1. 抗凝固薬ワーファリン 2. 片頭痛の治療薬の使い分け    
 
1.  抗凝固薬ワーファリン
 
質問: 84才の父のことで伺います。
従来高血圧のみで元気だったのですが、先日、動悸がして倒れ循環器病院を受診しました。
発作性心房細動の診断でワーファリンを処方され、納豆など食べのもの注意を受けました。なぜ納豆を食べてはいけないのですか。その他、ワーファリンを服用する際の注意点を教えてください。

答え: ワーファリンは血栓をできにくくして脳梗塞の予防や静脈血栓症の治療に使われる薬です。
同じ働きをする薬に抗血小板薬がありますが、血栓の原因が心房細動にあるときにはワーファリンが使われます。心房細動が発見されたときワーファリンの服用が必要か否かは「図1」のような手順で判断されます。
お父さんの場合には高血圧があるので現在血栓症がなくてもワーファリンを服薬されて方がいいことになります。心房細動には持続性のものとお父さんのように発作性のものとがありますが、いずれも同じ程度で血栓症をおこす危険性があり発作性でも服薬が必要です。
ワーファリンの効き具合はINRという採血でわかります。正常値は1、ワーファリンが効果を発揮するためには1.5以上、4〜5以上になると出血傾向など副作用の危険性があります。
毎月一度定期的にINRを検査して、その値によりワーファリンの量を0.5mg単位で調整することが必要です。
 
 
抵抗血小板薬(バイアスピリン)
抗凝固薬(ワーファリン)
 
作用機序   アラキドン酸→トロンボキサンA2 肝臓でのビタミンKの再利用
    合成酵素Cox2の阻害 還元酵素VKORの阻害
効果発現時期   服用後数時間 服用後数日〜1週
効果消失時期   休薬後数日〜1週間 休薬後2〜3日
 
※ 心房細動 「図1」
従来、脳梗塞、心筋梗塞の既往
あり
なし
年令に関係なくワーファリン
高血圧、糖尿病、脂質異常症
 
あり
なし
75才以上ならワーファリン
経過観察
INR目標値 70才以下2.0〜3.0
INR目標値 1.6〜2.6
(ワーファリン2〜3mg)
(ワーファリン2〜3mg)
70才以上1.6〜2.6
 
(ワーファリン3〜4mg)
 
ワーファリンの効果に影響を与える要因は肝臓や腎臓機能、食べ物、服薬の不規則、他の病気の薬の4つがあります(表2)。
血液が固まって血栓ができるために必要な12種類ある凝固因子のうち4つは肝臓内でビタミンKの働きの補助を得て活性化されます。
体内のビタミンKは限られた量しかないので、通常還元されて再利用されています。ワーファリンはこのビタミンKの再利用を促す酵素(VKOR)の働きを阻害して活性型ビタミンKを不足させ、凝固機能と血栓形成を抑制します。
もし体内にビタミンKが豊富にあるとワーファリンの作用が減弱します。ワーファリンの作用を低下させる食物はビタミンKを多く含むものです(表3)。
ビタミンK100μgでワーファリン0.25mgの効果を相殺し、INRは約0.2低下するとされています。
市販されている糸引き納豆人パック40gはビタミンKを350μg含有しているので、1パック食べるとINRは約0.7低下、ワーファリンに換算すると0.88mg、1mgの錠剤をほぼ1錠飲み忘れたのと同じことになります。
通常処方されている量は75才以上の高齢者で2〜3mg(1mg錠で2〜3錠)です。
ブロッコリーやほうれん草、緑茶や改装にもビタミンKが含まれていますが納豆よりは小量です。これらの食べ物を絶対に食べてはいけないということではなく、いちどに大量を摂取してはいけないということです。
もし、納豆でも小量を毎日食べるのであれば、それに合わせてワーファリンの量を増やせば、目的のINRは得られることになります。

ワーファリンの効果に影響を与えるものに他の病気の薬もあります。効果を増強するものに通風と脂質異常症の薬、効果を減弱するものに骨粗しょう症の薬があります。食べ物の種類と合わせて他科から処方されている薬にも注意し、医師によく伝えてください。
 
ワーファリンの効果に影響する因子  表2
1. 肝臓病、腎臓病  
2. 食べ物  
3. 服薬の不規則  
4. 他の薬剤 効果増強: 痛風のある薬、 脂質異常症のある薬(フィブラート系)
    効果減弱: 骨粗しょう症のある薬(グラケー)
 
ワーファリンの効果に影響する食べ物  表3
  ビタミンK含有量 INRの低下 ワーファリン換算
糸引き納豆
100g中
870μg
約1.7
約1.25mg
ひき割り納豆
100g中
1300μg
2.6
3.25mg
市販の糸引き納豆1パック
40g中
348μg
0.7
0.88mg
クロレラ
100g中
3600μg
7.2
9mg

ブロッコリー、ホウレン草、シソ、緑茶、海苔、わかめなど

一人前
100〜300μg
0.2〜0.6
0.25~0.75mg
 
  Tips  
INR=患者のプロトロンッビン時間/健常者のプロトロンビン時間
正常値1
抗凝固作用1.5以上
ワーアファリン0.5mgでINR 0.4、1mgでINR約0.8上昇
ビタミンK100μgはINRを約0.2低下、ワーファリン約0.25mg分の効果を相殺する
 
 
ワーファリンの副作用は出血傾向ですが、歯科や皮膚科、眼科の処置、小手術の際には通常ワーファリンを休薬する必要はありません。服用中に消化管出血を起こした時や外科手術を受けるとき、慢性硬膜下血腫などを起こした時にはワーファリンの服用を中止する必要があります「表4」
ワーファリンの効果は2~3日で消失します。急速にワーファリンの抗凝固作用を止めたいときにはビタミンKや第IX凝固薬の静脈投与が有効です。
 
ワーファリンの副作用と服薬中止  「表4」
ワーファリンの副作用
軽 症
皮下出血、鼻血、歯茎の出血
要注意
消化管出血
ワーファリンと外科的処置
服薬中止    不 要
鼻出血 歯科処置・抜歯 皮膚科の小手術
 
白内障手術
必 要
消化管出血 外科手術 頭蓋内出血
 
このようにワーファリンは食べ物の影響を受け、毎月血液検査で効果をチェックし投薬量の細かな調整が必要な薬ですが、逆に言うと調節が容易で効果が明らか、薬価が安いなどの利点もあります。
ワーファリンは現在最も常用されている抗凝固薬ですが、まもなく、食べ物の影響を受けない新たな抗凝固薬(抗トロンビン製剤)が厚生省で認可される予定です。こちらにとって変わられるかもしれません。
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